2025年6月11日、参議院議員選挙への出馬を表明した山尾志桜里氏が記者会見を開きました。過去の不祥事に対する謝罪と、今後の政治活動への決意を表明する場となったこの会見は、多くの国民の注目を集めました。

過去への謝罪と反省の言葉
会見の冒頭、山尾氏は、過去の3つの不祥事について深く謝罪しました。一つ目は、2009年から2012年の第一期議員時代に発覚したガソリン代の不正請求問題です。当時の秘書がガソリンのプリペイドカードの領収書を不正に使用し、経費請求を行っていたことを説明し、金額は166万円であったと記憶していると述べました 。この問題については、当時全額返金されたものの、自身の監督責任を痛感していると語り、当時の会見での説明不足についても反省の弁を述べました 。
二つ目は、2021年の議員パス私的利用問題です。山尾氏は、議員パスを使って私的な用事を済ませていた事実を認め、当時の謝罪の仕方が不適切であったと後悔を表明しました 。今後は「曇りのない使い方」を約束するとし、公私混同を厳に慎む姿勢を示しました 。
そして三つ目が、2017年に報道された私生活に関する問題です。この指摘に対して、山尾氏は「極めて未熟だったと心から反省」していると述べ、当時の会見で質問を受け付けなかったことを深く後悔していると語りました 。今、「一国民として日本の政治家はより強い責任を持っている」と痛感しているとし、自身の未熟さを率直に認めました 。
私生活問題への深掘り質問と山尾氏の対応
会見では、フリージャーナリストから私生活問題に関する踏み込んだ質問が相次ぎました。特に、報道された内容について、当時山尾氏が不倫関係を否定していたこととの整合性や、相手方の男性の妻が自ら命を絶ったとされる報道について、山尾氏の見解が問われました 。
山尾氏は、「8年前にお話しした以上のことを申し訳ありません、どうしてもこの場で新しく言葉を紡ぐこと、ご容赦いただけたらと思います」と述べ、詳細な言及を避けました 。その理由として、「それぞれの色々な思いの方がいらっしゃいまして、いろんなお立場があります。そういう中で私が今新たに何かお話をすれば様々ご迷惑をおかけすることもあると思います」と説明しました 。また、相手方の妻の死に関する報道については、「今ご指摘のことについて私は事情を存じ上げません」と述べ、この場での言及は控える姿勢を崩しませんでした 。この回答は、多くのコメント欄で「逃げている」「誠意がない」と批判の的となりましたが、山尾氏としては、これ以上の言及が新たな波紋を呼ぶことを避けたいという意図が見て取れます 。
出馬の経緯と国民民主党への期待
会見の後半では、山尾氏の今回の出馬の経緯と、実現したい政策について語られました。山尾氏は、この4年間民間人として憲法、人権外交、対中政策に取り組んできたことを説明し、特に国民民主党の玉木代表から「憲法、そして自分の国を自分で守る政策。山尾さん、もう一度戻って一緒にやろうよ」と誘われたことが、出馬の大きなきっかけになったと明かしました 。玉木代表からの誘いは今年に入ってからであったと述べています 。
山尾氏は、国民民主党が掲げる「給料が上がる経済」と「自分の国は自分で守る政策」という二つの柱を、立法の力、憲法の力で実現したいと述べました 。特に、2020年に国民民主党がまとめた憲法改正の論点整理を、2025年に時代の要請に合わせてアップデートすることが自身の第一の仕事だと強調し、緊急事態条項の成立に向けて尽力したいと語りました 。また、安全保障の具体策として、情報保全のためのスパイ行為防止法や、国土保全のための外国人による土地取得規制といった立法に取り組む意向を示しました 。子育て支援についても言及し、子育て世代の「手取りを上げて、本当に子供を産み育てやすい社会を作りたい」と、自身の経験も踏まえながら熱意を語りました 。
今後の活動と「山尾志桜里」という名前の選択
今後の活動については、全国比例での立候補であるため、愛知を含め全国各地で政策や説明の機会があれば、きちんと向き合って発信していく責任があると考えていると述べました 。都知事選の応援についても、国民民主党の公認候補として要請があれば全力で応じたいとしています 。
SNS上での批判については、「正直想定以上でした」と述べ、全てを見ることはできないが、「1つのアラート」としてエッセンスを見逃さないように努力しているとしました 。しかしながら、国民民主党の「対決より解決」という方向性をSNSの中でも作り上げていくことが重要だと感じているとも語りました 。また、立候補を断念する気持ちになったことはないと明言し、再起への強い決意を示しました 。
今回の選挙で「山尾志桜里」の名前を使用することについては、弁護士としての活動は旧姓に紐づいているものの、政治家としての活動は圧倒的に山尾の名前で紐づいているため、過去の活動も批判も「逃げずにきちっと背負って」活動を積み重ねていく必要があるという理由で選択したと説明しました 。これは、過去の自分を清算し、新たなスタートを切るという意思表示と捉えることもできるでしょう。
会見への様々な反応
この会見に対する世間の反応は、非常に厳しいものでした。コメント欄には、「結局逃げてばかりで答えてねえじゃねえか?!なんの会見なんだこれは?!二度とでてくるなよ。」「失われた命のことを考えると、やはり応援できない。」といった批判的な声が多数寄せられました 。また、「これじゃぁ余計印象悪化したね。全く誠意を感じない。」「何のための会見だよ」といった、会見の意義自体を問う意見も多く見られました 。国民民主党に対しても、「国民民主党、終了のお知らせ。」「この会見で国民民主には投票しないと決めました」など、山尾氏の擁立が党の支持率低下に繋がることを危惧する声が上がっています 。
一方で、「山尾さんを応援します。憲法改正論は凄くすばらしいと思います。記者は、馬鹿な質問をしていますが、応援します。頑張ってください。」といった、山尾氏の能力や政策を評価し、応援する声もわずかながら見られます 。しかし、全体的な論調は厳しく、「人として『未熟』な方は国会議員になって頂きたくない。また、不倫報道当時、47歳で『未熟』な方が国会議員に相応しいとは思えない。『未熟』という言葉で言い訳をしているとしか思えない。」といった、人間性や資質を問う声が多くを占めました 。
求められる真摯な姿勢
山尾志桜里氏の記者会見は、過去の不祥事に対する謝罪と、今後の政治活動への決意を表明する場として開催されましたが、多くの国民からは疑問や不信感が拭い去られない結果となりました。特に、私生活問題に関する核心的な質問に対し、明確な回答を避けたことは、批判の大きな要因となっています 。
政治家は、国民の代表として、自身の行動や説明に高い透明性が求められます。山尾氏が今後、国民の信頼を回復し、掲げる政策を実現するためには、より一層の真摯な姿勢と、国民が納得できる説明責任を果たすことが不可欠であると言えるでしょう。今回の会見が、山尾氏の政治生命の新たな転換点となるのか、それともさらなる混迷を招くのか、今後の動向が注視されます。
まとめ
山尾志桜里氏の参議院議員選挙出馬表明会見は、過去の不祥事への謝罪と政治活動への決意表明を目的としていましたが、十分な説明責任を果たせなかったと言えます。特に私生活問題に関する質問への回避的な態度は、多くの国民の不信感を募らせる結果となりました。
国民民主党の政策実現に向けた意欲は示されたものの、政治家としての資質や透明性への疑問は依然として残されています。今後、山尾氏が国民の信頼を回復し、政治家として再起を果たすためには、より踏み込んだ説明と真摯な姿勢が不可欠です。
この会見は、山尾氏の政治生命における重要な転換点となる可能性を秘めていましたが、現時点では国民の理解を得るには至っていないと評価せざるを得ません。今後の政治活動を通じて、どのように信頼回復を図っていくのか、その取り組みが注目されます。
コメント